昨年冬に、初めて青山ブックセンターへ行った際購入してしばらく寝かせていた。
柴田元幸さんの訳本は村上柴田翻訳堂シリーズで何冊か読んでいたはず。
オースターは初めてだ。どうでもいいがオースターのことをどうしてもオールスターと読んでしまう。(感謝祭)
主人公は生死を彷徨うような事故から生還した作家シドニー・オア。
ある文房具店でブルーのノートに出会い、それに小説を書き始めた日から二週間ほどの出来事が描かれる。
物語内物語としていくつかのエピソードが組み込まれ、決して長くはない小説だがかなりボリューム感がある。かなり細かい注釈もあるためだろう。この注釈がまた、細かすぎて、作者のノンフィクションなのかな?と思ってしまうぐらい。
冒頭を読み始めて、かなり好きだと思った、痺れまくって久しぶりに本を読んで高揚した。
世界は偶然に支配されている。ランダム性が人間に、生涯一日の例外もなくつきまとっているのであり、命はいついかなる瞬間にも、何の理由もなく人から奪われうる。
シドニーの小説のテーマであるフリットクラフトのエピソードからの引用。
“世界は正気で秩序のある場だと思っていたがそうではない”。
この一文を読んだ数日後には某政治家の銃撃事件が起こり、いやに実感を持って思い起こされることになってしまった。
それからずっと不穏な動きをしている美しい妻グレース。
結局グレースから真相は明かされず、シドニーの想像でしか語られないがたぶん他に男がいる、絶対にいる。
「私がなぜあなたと結婚したか知ってる?」
「いいや。訊く勇気が出たためしがない」
「あなたになら絶対裏切られないってわかってたからよ」
「とにかくずっと私を愛してちょうだい。そうすればすべて何とかなるわ」
どうして私たち、自分のことを間違いなく愛してくれる人のことを最初から選べないんだろうね。。。
台詞回しと物語の袋小路感が村上春樹っぽいな(稲妻男さん)と思いながら読んでいた。
ポール・オースターいいな。他の作品も読んでみたい。