国境の南

雑感

沖で待つ

ブログを書こうと思うと腰が重い。

練習と思って頑張ってやっていきます。

 

10月の読書3冊目は絲山秋子沖で待つ』。先日行った時に買ったフヅクエ文庫のうちの一冊。短編が3つ。ぱらぱらと読み始めたら面白すぎる、出だしからアクセル全開の「勤労感謝の日」。改めてとびらの著者紹介を見てみると、表題作が芥川賞受賞作品とのこと。知らなかった。

主人公があまりにも毒づくうえにやたらリアルで笑ってしまう。近所のおばさんがお見合い話を持ってきてくれるけどいざ会ってみたらひどくて

それから彼は私を値踏みするように上から下まで見回した。そして私の下半身に目をやったまま、にへらり、と歯茎を剥き出した。笑いのレベルで言うと猿の方が断然かわいい。

 野辺山氏は、敢えて表現するとあんパンの真ん中をグーで殴ったような顔をしていた。

ここめちゃくちゃ笑ってしまったが、30代半ばの婚活の厳しさがあるな。当時は珍しかった女性総合職として勤めていた時のエピソードや元同僚との飲みの会話の中からは女の生きづらさを節々と感じた。

 

表題作「沖で待つ」、こちらも女性総合職という境遇は同じ主人公と、同期の「太っちゃん」との交流が描かれる。職場の同期って、友達とかとはまた違う戦友みたいな絆があるのめっちゃわかる。もう8年の付き合いの同期何人かいるけど、お客さんとかお局にキレられてるヤバい場面を助けられたり助けたり

 

私たちの中には、あの日の福岡の同じ景色が、営業カバンを買いに行けと言われて行った天神コアの前で不安を押し隠すことも出来ず黙って立ちつくしていたイメージがずっとあって、それが私たちの原点で、そんなことは今後も、ほかの誰にもわかってもらえなくてもよかったのです。

ここ読んで思わず泣いてしまった。同期と一番最初に顔合わせした時の話とかたまにしたりするけど、本当居てくれてよかったよ、と思う。

同期が好きすぎて転職できない自分としては心に残る作品だった。