国境の南

雑感

マスカット・ベーリーA

▼朝。金木犀の匂いがしはじめた。出勤途中にみる田んぼの稲が刈り取られていた。昨日まで陽を受けてきらきらしていたのに、あとに続くであろう厳しくさびしい冬のことを思うと気が滅入る。電車の中で去年のフジロックでみた折坂悠太のことを思い出す。演奏を聞きながら私は、その音が山々にこだまするのを感じていて、そういう自然を含めて音楽を楽しんでいた。今年はそういう意識を特別しなかったような気がしてやはり折坂悠太は自然と調和しきっているようなところがあるように思う。会社について久しぶりに会った同期からある話を聞いて驚く。事情はわからないでもないがなんとなくショックを受ける。▼元上司から「昔おまえととった写真が出てきたがおまえがめちゃくちゃ雌すぎて、今落ち着いたなあ」という話をされる。まあ多分間違いないので何も言えないがその写真は気になるので送っておいてくださいと言っておく。当時は今よりもっと寂しくてそれを全くコントロールできていなかった。そのせいでめちゃくちゃ暴走していたし周りの環境にも要因はある。つい5、6年前の話である。最近向かい側の取引先の人が昔好きだった人に似てきてすごくざわつく▼帰り道、朝された話のことを考えていたらムカつくわ悲しいわ腹たってきた。詮索されたくなくて一芝居打っていたとしたら私たちの仕事にリスペクトがなさすぎる。どういう気持ちで毎週ミーティングに来ていたのだろう。私の貸した本は、無知な私たちを本当は笑っていたのか、それとも全く関心なかったんだろうか。近所のスーパーでワインを買う。去年の今頃に行った山梨のワインにする。マスカット・ベーリーA、美味しいやつは可愛らしい香りがして買ったやつもそうだった。懐かしい味がする。二人で色々試飲したのを思い出す。あの頃はどうしてあんなにカリカリして怒ってばかりいたんだろう。今更悔やんでも仕方ないのだが、罰みたいに思い出してしまう▼飲みながら意味のないことがしたくて、折坂悠太『薮IN』の好きな文章を打ち込んで写経した。もうすぐ試験なのにこんなことしてていいのか。でも別に意味のあることなんて何もないような気がする。あと一口飲んだらお風呂入って寝る。明日も仕事。